王国ファンタジア【雷電の民】
里の入口まで歩いてでる。眼下には見渡す限りの雲海がひろがっていた。ここにたどり着くまでのことが思い起こされる。
「どうやって王都まで行くんだ?」
俺の問いかけに彼女はにやりと笑ってみせた。
「ちと下がっといてな」
俺が距離を取ると、彼女の輪郭が歪んだ。バチバチッと火花が散り、そしてそこにはトラのような生き物が立っていた。
漆黒の地に銀色の虎柄の縞。毛足は虎よりも長い。
その四肢には雲を纏っていて。
ふさふさした尻尾と、額には1mもあろうかという金銀のマーブル模様の角。
黄金色の瞳が俺を捉え、細められた。
「驚いたか?」
くつくつと可笑しそうに喉を鳴らす。
「クラウ、ン…?」
「せや。早よ乗り。王都まではこれで空を飛んでくから」
そう言って俺の目の前で伏せる。
恐る恐るその背に跨がると「しっかり毛ェ掴んどいてや」と声が掛かった。
ぐうっと四肢をたわめると、彼女は勢いよく宙に駆け出していった。
向かう先にはドラゴンとの戦いが待っている。
<第一部 完>