シルバークリスマス
「今日は、ありがとう」と、後ろから千恵子さんは言う。「これは娘から私へのクリスマスプレゼントね。とても楽しかった。この場所はね、奈津美と主人と三人で来たことがあるの。娘の招待でね。あの頃が一番幸せだったのかしら。歳を取るとね、良い思い出だけが残るの。悪いことは時間が経つと、ろ過されたみたいに忘れてしまう。それが歳を取ることの美点かしらね。歳を重ねることは、悪いことではないわ。これは、私からあなたへのクリスマスプレゼント。今度はあなたが楽しんできて」千恵子さんはそう言うと僕に封筒を手渡した。