Utopia
utopia
不幸
最悪だ。
午後十二時。
深夜0時。
要するに真夜中。
私は一人、鼻息も荒く家路を急いでいた。
真夜中の街は不気味だ。
ぽつりぽつりと点いている電灯が逆に暗闇を引き立てて、心細くなってくる。
高三にもなって、暗いの怖い、なんて言うつもりは更々ないが、誰がこんな状況を喜ぶというのか。
大丈夫、この道を抜ければかなり明るい通りに出るから。
そうすればあとはほとんど家に直行だ。
そう自分に言い聞かせながら歩みを速めれば、この状況の根源である友人の顔が思い浮かんで舌打ちをする。
「あの不良め…。」
そもそもあの不良達の誘いに乗ったのが間違いだ。彼女達に連れ出され、自分が損をしなかったことがあっただろうか。
…まあ、けっこうあった。
だからこそつるんではいるのだが。
大通りまであと10メートルほど。その明るさで周りはいっそう暗い。
周りを見ないようにするために、今度は自分から、さっき玄関から憎らしい程の笑顔で見送ってくれた友人、辻ヶ丘桐(つじがおか きり)の顔を思い出した。