Utopia
…………は?
「あー…、いや、命のってのは言い過ぎですけど、助けていただいたことは…感謝…。」
してない。
むしろ普通にあの警官に補導されたほうがよっぽど平和だったに違いない。
変態は妙に目を輝かせて、更に私の肩を引き寄せた。
「ちょっ、いい加減に…!」
「お礼は?」
近くで見た瞳の色は、日本人にしては薄いな、と
そのときは全然気付かなかった。
「はぁ!?」
変態っていうか極悪人じゃないですかこの男!
「だからー、感謝してるんでしょー?お、れ、に。」
ああ、
なんか震えてきた。
恐怖じゃないよ、もちろん。
「…っお礼ってのは、自分から欲しがるもんじゃないでしょ…。」
やけに近い距離に、声が震えるのが情けない。
「たしかにー、その通りだよねー。…じゃあ、俺のお願い聞いてくれない?」
ヘラヘラしている男の顔からは、何を考えているのかは全く読み取れない。