Utopia
「だって優季が呼んでくれないのが悪いんじゃない!やっと…やっと四人目に可愛い女の子が産まれて、人形さんみたいな服着せてパパママ呼びして欲しかったのに!お兄ちゃんにばっかり影響されて!スカートだって制服のしか持ってないし…お母さんが何百枚優季のために作ったと思ってるの!?」
「いやいやいや、桁おかしいからお母さん!」
「優季!?なにやってるんだ!夕美をいじめたらただじゃおかないぞ!」
「うるさいバカップル!!それが父親が娘に言う台詞か!」
みなさん、今日も都堂(つどう)家は平和です。
「……あれ?」
「優季、ホントに遅刻しちゃうわよ。」
「母さん、私昨日いつ帰ってきたか知ってる?」
ワイシャツに手を通しながらぼんやりと言う。
低血圧気味なので、朝はなにかと辛い。
でも、桐の家に行ったのは夢じゃないような気がする。
「あたしは桐ちゃんの家に泊まるもんだと思ってたんだけどね…」
母の間の抜けた声に被せるように、さらに抜けた声がした。
「夕美さーん、奈津達起こすの手伝いましょうか?」