Utopia
………ですよね。
よく考えたらうちの家族が私の心配なんてするわけないんだよ、これが。
『泊まってけばいいのに。ホント真面目だね、アンタ。』
クスクス笑う桐の声が頭に響いた。ああぁあ、むかつく。
腹が立つ反面、急に引き返したくなった。
飛香はまだ床に転がって寝てるんだろう。桐は…何をしていても不思議じゃないな、奴は。
深いため息をついて、目の前に続く道を見据えた。
もう二本進んだ道を曲がれば我が家に着く。しかし、ここを曲がっていけば交番の前を通る。
交番にはお巡りさんがいる。なんか安心じゃないか。
そう思って、少し暗くなる路地を曲がった。
交番が見えてくる。
この地域の警察官は真面目な人が多いようで、夜中でも休日でも、必ず中に誰か一人はいる。
窓ガラスの明りに、少しほっとした。
不意に後ろから声がかかる。
「君、こんな時間に何をしてるんだ?」
……あぁ、
もしかして私は心髄の馬鹿なのかもしれない。