Utopia
『……優季か?』
「あたりまえじゃん。」
携帯なんだし。
それにしてもさすが涼。桐なんかよりよっぽど出るのが早い。
涼の声を聞くのは半年ぶりだ。
『久しぶりだな。』
「そーだね、お正月ぶり。最近あんまり帰ってこないね。」
『悪い、卒論が…。』
私に謝ることないのに。
相変わらずの涼が微笑ましかった。
『…何笑ってんだよ。』
「バレたか。いやー、変わんないなって。でもそろそろ帰ってくるんでしょ?進から聞いたよ。」
『あ、ああ。ちゃんと帰るのは来年なんだけど、これからちょいちょい帰ると思う。』
「オジサンの病院継ぐんだ?」
有森医院はこのあたりで最も頼れる病院だ。小児科も見てくれるから、私も小さな頃から通っている。
有森兄弟はそこの息子。
彼らの両親ほど地域の人に愛されている医者はいないだろう。
『…そうだな。』
「あれ?そんなこと言っていいのかな?オジサンまだまだ現役だから、怒っちゃうよ。」
『お前が言わせたんだろ!』
なんとなく元気のなかった声が元に戻ってきて、少しホッとした。