Utopia
割と本気で痛そうな警官の横にしゃがみ込もうとしたとき、自分の自由になった右手が目に入った。
「あ!?待てテメー!!」
ありがとう神様!!
「待てー!!!」
なんて陳腐なセリフか。
桐の真似をして、逃げながらも鼻で笑ってみた。
しかしやはり警官は速い。
ていうかこれって本物の犯罪なんじゃないのか。
一瞬よぎった不吉な考えはすぐに頭から消すことにした。
しかし困った。
もうすぐ自分の家なのに。
奴の目の前で自宅に入るわけにもいかないだろう。
幸い、面は割れていない。
こうなったらいよいよ振り切るしかないじゃないか。
大丈夫、私は中一の頃は陸上部だったんだ!三週間ほど。
「凡人じゃねーか!」
「人の心を読むな!」
なんだあの警官、
超能力者かなんかなのかな。
バカなことをしている間に、自分の家が目の前だ。
しかたない、とりあえず通り過ぎよう。
追っ手を撒くためにとりあえず目についた細い裏道を曲り、どうしたものかと走り続けた、その時だった。