Utopia
「そっかー。ならよかった。いやー、人助けは気分がいいねぇ。」
へらりと笑って私の髪をかき混ぜる男は長身で、髪がキラキラと金色に輝いていた。
………帰ろう。
「あー…ありがとうございました。じゃあ、私はこれで失礼いたします。」
「えー、なんで俺がここにいたの、とか聞かないのー?」
「…なんでですか?」
ものすごく苦手なタイプだ。
初対面で決め付けるのはかなり失礼だろうが、あいにくこのカンは外れたことがない。
ちなみに、桐に初めて会ったときも同じことを考えた。
「俺ねー、さっきここに着いたんだ。」
「?」
質問の答えになってないじゃないですか、それは。
そう言おうとして、ようやく私はこの場所がどこかに気付いた。
「………妖怪屋敷…。」
「んー?」
ひくり、と頬が引きつった。
ここは妖怪屋敷。
何十年も人が住んでいない平屋で、壊そうとすると呪われる。だからまだ残っている。