Utopia







…という噂がある。

近所というかほぼ隣に住む私たちには迷惑極まりない話だ。






「俺、今日からここに住むんだ。」

「そりゃ大変、がんばって下さ…………は!?」

「近所さんみたいだよねぇ、よろしくねー。」






そう言って目の前でひらひらと手を振る、ホストまがいの男。

ていうかどーゆう神経してるんだろう。こんな薄汚い平屋に住んでも良いことないに決まってる。






グルグル考えが回り始めたところで、いつもの私が帰って来た。


…まあ、関係ないか…。






「あー、じゃあ、私、ここの隣っていうか裏に住んでるんで、…まあ何かあったら。」



できれば来るな。
そう思いながらニッコリ笑って男を見上げると、向こうも私に負けないぐらい怪しい笑みで返してきた。


……え、なに。










「そうだ、ねぇ、
……俺、君の恩人だよね。」
「は?……って、ぎゃっ!」




やらしい微笑みを浮かべて近付いて来た男から無意識に遠ざかろうとすると、いきなり伸びて来た腕に強く腰を抱き寄せられた。








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