戀々 -ren ren-
―――2週間前
「知佳世、次移動だよ。物理室」
愛加が私を見下ろして言う。
「うそっ。はは、ちょー寝てたわ」
私は机に落ちそうな、あごのヨダレを拭い身を起こした。
「イビキかいてたし」
「うそっ!?」
「うそ」
愛加は舌を出して笑う。
目は笑ってないけど…
これって愛加の得意技なんだ。
「ありえねー」
私は笑いながら、のろのろと次の授業の準備をする……
次の瞬間、
チャックが開いたままの筆箱を床にぶちまけた。
そこへちょうど彼、吉岡昇太が通り掛かったわけ。
吉岡昇太はぶちまけた中身を一緒に拾ってくれた。
「ありがとう」
お礼を言う私を横目に、彼は何も言わず教室を出て行った。
無視かよ。
感じ悪いなぁ…
「へー意外。アイツ知佳世の事好きなんだ」
愛加が吉岡昇太の後ろ姿を横目に言った。
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