戀々 -ren ren-
〜〜♪♪
教習開始2分前に流れる音楽が鳴った。
バタバタと慌ててロビーを出て行く何人かの教習生を横目に俺は指導員室へと向かう。
階段に差し掛かると、階上から声が聞こえた。
「ゲッ!次の教習、アオヤナギだし!」
その声にハッとし、素早くトイレに身を隠す。
「だれー?オッサン?」
「いや、めっちゃ若い。
顔はそこそこいーんだけど教習中マジ顔近いんだよね〜。
チョーきしょい。
絶対遊んでるよ」
その会話は「ぎゃはは」という品のない笑い声と共に消えていった。
俺は腕を組み、深いため息をつく。
「アオヤナギじゃなくてアオヤギだっつーの!
お前なんかキョーミねぇよ!」
こんな本音を大切な"お客様"である彼女達にぶつけることもできない。
ぼやきと共に、目の前の鏡に映る自分の顔に嘲笑という名のプレゼントを贈った。
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