Tears〜硝子細工の天使〜
‡後悔‡
《あんな奴・・・・》
初めはそう思っていたかほだったが
次第に空白になっていく心に、戸惑いを隠せなかった。
一度でも、あんな刺激的な経験をしてしまうと
ただ仕事に行き、家事をするだけの毎日が、とてつもなく退屈で
生き甲斐を失くし、魂さえなくなった抜け殻のようだった。
仕事は思ってたようなことをさせてはもらえなかった。
入った時と話が食い違い
自分のやりたい事、目指すものとは
大きく掛け離れていた。
それでも生活の為には、我慢しなくてはならない。
そんな仕事の愚痴や不満も、いつもよしきが聞き
受け止め、励まし、時に叱ってくれることもあった。
今はそれをぶつける相手もいない…
かほの心はぽっかりと大きな穴が開き
何をしても埋めることができなかった。
かほは自分で気付かないほど
深く深く傷ついていたのだった。