Tears〜硝子細工の天使〜
あおいはかほの誕生日を知っていた。
よしきとかほが接触しないよう見張る為に、泊まりにくるのは計画的だと推測した。
あの冬の夜、よしきのアパートの扉を叩いたのが、かほだということくらい
あおいは気付いていただろう。
その時、どんな用でどんな話をしに来たのか…
あおいがよしきを問い詰めたのかはわからない。
だが、あおいの中でも
《かほ》
という女の存在は、一生忘れることのできない、憎い存在になったに違いない。
自分よりも一回り以上年上の、子供もいる女に
よしきの心を奪われたことは
他に頼る者もいない、友達もいない
唯一よしきだけが心を許せる存在のあおいにとって許し難い事実であり
また、それを認めたくない気持ちもあったに違いない。
よしきがかほの本名を知っていたのも
実は向こうも探偵をつけていたと聞いた。
何ゆえ、調べたのかはよくわからない。
かほには、それについて負い目があり、深くは聞き出す気にはなれなかったからだ。