Tears〜硝子細工の天使〜

去年までは、夜中零時になると同時に

『お誕生日おめでとう♪』

とよしきはメールをくれていたが

この年ばかりはメール音は鳴らなかった。


あおいがいるのだ、一切連絡は取れない…

期待しないよう自分に言い聞かせても、やはり淋しかった。



その日の朝、出勤途中の車の中で、やっと、よしきからのお誕生日メールが届いた。


――とうとう40歳を迎えてしまった――


何も嬉しくなかった。



『今日何時頃帰る?』

よしきはメールで問い掛ける。

かほは少しばかり期待に胸を膨らませた。



『う〜ん…早くても7時位だろうなぁ…』


もしかして、会いに来てくれるんじゃ……?

ドキドキしながら返事を待つ。


『じゃあ寄り道しないで早く帰ってね!』


かほの期待はどんどん膨らんで行く……


『えっ?なんでなんで?気になるじゃん?』


ルンルン気分でメールを返す。


『帰ってからのお楽しみだよ♪』


うまくはぐらかされてしまい、そのまま職場に着いてしまった。



日付が変わった瞬間のお祝いメールがなかったことなど

かほには取るに足らないことで

気持ちは更に舞い上がって行った。





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