Tears〜硝子細工の天使〜
かほは、よしきが来てくれるんだと信じていた。
――やっぱり誕生日はなんとかしてくれたんだ!
《自分の言ったことに責任持つのが大人だと思ってる》
それがよしきの持論だった。
だからはっきりするまでは期待させるようなことは言わない。
そう思って今まで何も言わなかったんだろう…
と、かほは勝手に解釈していた。
仕事を早めに切り上げ、いそいそと帰り仕度をした。
若い保育士の一人が
「佳奈子先生、今日はこれから、ダーリンとデートですか?」
からかうように言った。
イベント好きな園長は、職員の誕生会をやるのが楽しみだった。
職員全員から500円を集め、4月生まれから順番に
祝ってもらった人が次の誕生日の人のプレゼントを買いに行き、司会進行をする。
とは言っても、HAPPY BIRTHDAYの歌を歌い
プレゼントを渡し、それを皆の前で開けて披露するだけのことだ。
かほはその若い保育士に
「まぁねぇ〜」
と浮かれたように答え、家路へと急いだ。