Tears〜硝子細工の天使〜

かほは、よしきが来てくれるんだと信じていた。


――やっぱり誕生日はなんとかしてくれたんだ!


《自分の言ったことに責任持つのが大人だと思ってる》

それがよしきの持論だった。


だからはっきりするまでは期待させるようなことは言わない。

そう思って今まで何も言わなかったんだろう…

と、かほは勝手に解釈していた。


仕事を早めに切り上げ、いそいそと帰り仕度をした。


若い保育士の一人が

「佳奈子先生、今日はこれから、ダーリンとデートですか?」

からかうように言った。



イベント好きな園長は、職員の誕生会をやるのが楽しみだった。

職員全員から500円を集め、4月生まれから順番に

祝ってもらった人が次の誕生日の人のプレゼントを買いに行き、司会進行をする。

とは言っても、HAPPY BIRTHDAYの歌を歌い

プレゼントを渡し、それを皆の前で開けて披露するだけのことだ。



かほはその若い保育士に

「まぁねぇ〜」

と浮かれたように答え、家路へと急いだ。
< 261 / 361 >

この作品をシェア

pagetop