Tears〜硝子細工の天使〜


まもなくすると、玄関のチャイムが鳴った。

すぐに出る気にはなれず、返事もしないでいると

再びチャイムの音と、コンコン、とドアを叩く音がした。


かほはソロソロと重い腰をあげ、不機嫌な声で返事をした。



「こちらは佐藤佳奈子さんのお宅でよろしいでしょうか?

花キューピッドから佳奈子様宛に山下様よりお届け物がございますが…」


やっぱり・・・・・


思った通りだった。


花でも送ってくれたのだろう、とかほはそう思っていた。

何故なら、知り合ったばかりの頃


《花が大好きで、花束をもらうのが凄く嬉しい》

と話したことがあったからだ。


無愛想に玄関を開け、花束を受け取った。

可愛いらしいメッセージカードには

《40歳、おめでとう!》

と書かれてあった。


せっかくのプレゼントだというのに、少しも嬉しくなかった。


それどころか、怒りが込み上げ、花束を無造作にソファの上に投げた。



……もう苦しむのは嫌!

……もうこんな関係は嫌!



かほは携帯を手に取ると

『今届きました。ありがとうございます。』


他人行儀な、素っ気ないメールをよしきに送った。
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