Tears〜硝子細工の天使〜
‡新しい恋‡
クルージングの日がやってきた。
朝早くに家を出て、港町へと電車を乗り継ぎやってきた。
海の上に何隻ものヨットが停留し
波と風に揺れてユラユラとしていた。
ギラギラと強い光を放ち始めた太陽に反射し
揺れるヨットからキラキラとまばゆい光が輝いていた。
「では、今から皆さんに乗って頂く船の名前と、その船のオーナーさんを言いますから
呼ばれた方は、オーナーさんについてヨットへ順にお乗り下さい」
責任者の合図と共に、名前が次々と発表されていく。
「佐藤さん!佐藤…佳奈子さん」
呼ばれて手を揚げ返事をした。
「えっ…と、あなたのグループはドリカム号で…オーナーは浜島さんです」
すると浅黒く日焼けをした、筋肉で締まった体つきの若い男が姿を現わした。
「おはようございます。はじめまして!
ヨットは初めてですか?」
男が元気よく話し掛けてきた。
笑顔のよく似合う、いかにも海の男という雰囲気で
相手に緊張感を与えない物腰…
笑うと目がなくなり、人が良さそうで、明るい男…
その爽やかな出で立ちに
佳奈子はビビビッと
あの感覚を感じる自分を否定することができなかった。