Tears〜硝子細工の天使〜

一週間後――

先日降ろして貰った駅まで、秀人が迎えに来た。


息子の拓也も、里沙達の土産話に興味を持ち、珍しくすんなりついて来ていた。


今日は島までヨットで行くことになっている。

ヨットハーバーに着き、ドリカム号に乗ると、初めて見るメンバーが大勢いた。


ヨットが動き出すと、男連中はとたんに酒を飲み

下らない会話に興じて行った。


佳奈子は紅一点、その中に入り

烏龍茶を片手に、つまらない親父ギャグに付き合い、ケラケラと笑った。


話題には加わらず、上半身裸になり

テンガロンハットにサングラスをかけ

煙草をくわえながら舵を取っている秀人に

サザンオールスターズのBGMと

海の香りがよく似合っていた。





よしきとは、あれ以来連絡がまた取れなくなっていた。


『ごめん、また来ることになった。今度は長くなりそうなんだ』

『わかった……とにかく帰ったら連絡して。絶対ね!』




秀人を気になりかけながらも、かほはやはりよしきへの想いは捨てられないでいた。
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