Tears〜硝子細工の天使〜
‡罪‡
佳奈子の中に、まだ《かほ》が存在していることを感じながらも
認めまいと隅へと追いやって、目を背けてきた。
だが、よしきの声を聞いたとたん
突然《かほ》が地響きを立てて現れ始めた。
すでに秀人のことは頭の中から消えていた。
「もう、掛かってこないって思ってた…」
「誰かいい人でもみつかった?」
そうだ、この瞬間を待っていたのだ。
いつか言おうと心に決めていたセリフ・・・・
自分から、さよならを告げること…。
「……まさか!できるわけないじゃん!」
―――言えなかった…。
佳奈子はそんな自分に物凄く嫌悪感を抱いた。
秀人の顔が浮かんでくる。
今頃眠ってしまっただろうか…
それとも頭痛に苦しんでいるだろうか…?
ちゃんと秀人の存在を明らかにし
《もう二度と会わない》
そう言えなかった自分が情けなく、また恨めしかった。