Tears〜硝子細工の天使〜
‡平穏‡
しばらく放心状態だったかほも
時間と共に落ち着きを取り戻し
秀人が家に来る頃には、すっかりいつも佳奈子になっていた。
秀人は明るい。
その明るさに救われ、昼間の出来事などすっかり忘れていた。
また秀人は眠るのが早い。
寝るとなったら、ものの3秒ほどで、静かな寝息を立て始める。
その日も佳奈子は、隣で安心したように眠る秀人を愛おしく思い
髪を撫でたり、頬ずりしたり
鼻をつまんでみたり、キスをしてみたり……
そして、心の中で
《私にはこの人がいる…もう淋しくない。
…これでよかったんだ》
そう言い聞かせ
これからこの人と幸せになろう…
もう後戻りはしないで、前だけを見て行こう。
そう自分に誓った。
それからの佳奈子は、秀人がいてくれたお陰で
よしきのことで、泣き狂い、精神のバランスを崩すようなことにはならずに済んだ。
秀人の存在に心から感謝し、やっと幸せへの道しるべを見つけたような気がしていた。