Tears〜硝子細工の天使〜
‡冷めていく気持ち‡
秀人の悪い癖だった。
その時の思いつきで、調子のいいことを言って喜ばせてみるものの
実際土壇場にきて、無理だと判断すると
いとも簡単に約束を撤回する。
期待を裏切られることも何度かあった。
また、社長にものすごく忠誠を尽くし
一緒にいても、社長から個人的な頼みを受けると
あたかも一人ですから行きますよ、というようにカッコつけ
佳奈子を犠牲にし、出掛けて行ったりすることも多かった。
「休みで彼女のところにいるから、今日は無理ですって、何で言えないの?
しかも仕事じゃないのに…」
「これも仕事のうちなんだよ。
今から恩を売っておかないとね!
将来かなちが幸せになるためでもあるんだから、文句言っちゃダメ」
そういっては、社長の小間使いのように
佳奈子の家からさっさと出て行くのだった。
佳奈子はいつも秀人のそんなゴマスリを不愉快に思っていた。
《うまく利用されてるだけじゃん!》
《ただのイエスマンなだけじゃん!》
佳奈子は段々と秀人への気持ちが冷めて行くのを感じていた。