Tears〜硝子細工の天使〜
‡合い鍵‡
誕生日が過ぎてまもなく
「僕引っ越すことになったんだ」
よしきが言った。
「引越したら、かほちゃんに合い鍵渡すからね。いつでも会えるよ!」
合い鍵・・・
なんて素敵な言葉・・・
一人暮らしの男と付き合うのは初めてだったので
かほはその
《合い鍵》
の響きがとても新鮮で
幸せの象徴のような気がしていた。
初めてよしきの家を訪れる日
かほは自宅のキッチンで料理をしていた。
ハンバーグを作り
ひじきと大豆を煮る。
味噌汁は向こうで作ればいい…
お洒落な外食より
きっと家庭の味を喜ぶだろう
そう思って考えた献立だった。
好きな人の為に料理をするのは
なんて幸せで
なんて楽しいんだろう。
かほはよしきの喜ぶ顔を想像しながら
鼻歌まじりに
手早く下ごしらえをした。