Tears〜硝子細工の天使〜

彼女の話を

聞かされる度に

「素敵な人だったんだね
大切な思い出だね…」


精一杯大人ぶっていたけど


ホントはとても悲しかった…


「元カノの話は聞きたくない

悪口も嫌だけど

いい思い出ばかりなんか聞いたって

嬉しくないよ!!」

かほが時々我慢できずに言うと


よしきは決まって

「それを忘れさせてくれたのは、かほちゃんだよ」

笑ってそう言った・・・


例えそうであっても

彼女を誉める言葉ばかり聞かされて

気分のよいものではなかった。





しかし、合い鍵をもらってから

よしきの留守中料理を作りに行ったり

夜遅くによしきを訪ねて行ったり…


二人だけの幸せの

そして秘密の空間ができたことに

大きな喜びを感じ

かほの心は満ち足りていた。
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