Tears〜硝子細工の天使〜

理想と現実は違うもの…

そう自分に言い聞かせてもかほはいつも

《あおい》

の存在に嫉妬し、怯えていた。



ある時、些細な話しから

またあおいの話しになった。


かほは我慢がならなくて、意地悪くあおいを非難した。


「料理ができないなんて…そんな女…女じゃないよ!」



すると突然、よしきは飲んでいたビールの缶を、窓に向かって思いきり投げつけた。


「葵のことを悪く言うな!!」



窓硝子は鈍い音を立てたが、幸い割れることはなかった。


ビールの缶は床に落ち、白い泡と共に、黄金色の液体が絨毯にこぼれた。



かほは初めてよしきの荒々しい行動に驚き、身動き一つできなくなった。


呼吸をすることさえ忘れ、石にでもなったかのように硬直したまま……



……何分…いや何秒位だったと思う。



よしきはハッと我に返り優しく言った。


「かほちゃんを責めてるつもりはないからね?

…怒ったりして…ごめん」


その言葉を聞くと、恐怖で凍りついて、瞬きすら忘れていたかほの目から、涙がポロポロと音もなく落ちてきた…


まるで涙と共に魔法が解けたかのようで

頬に生暖かさを感じ

ゆっくりと呼吸をし始めた。




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