Tears〜硝子細工の天使〜
5月の連休明けの土曜日だった…
かほは昼ご飯を作りに、よしきの家に来ていた。
その日よしきは、同窓会の打ち合わせと余興の練習に
仲間と集まるため、食事を終えたら出かける予定になっていた。
「何時頃帰る?夜また出直すから」
「適当に来てて!今日中には帰るよ」
一緒に昼食を食べ終わると
よしきは押し入れから色々と荷物を出していた。
洗い物をしながら
横目でその様子を見ていたかほは
見てはいけないものを見てしまったような軽いショックを覚えた。
すぐによしきに尋ねたかったけれど、咄嗟に言葉が出ない…
かほが目にしたものは
段ボール箱に無造作に入っている、手芸や料理の本だった。
《きっと葵さんのモノなんだ…》
《料理はしないって言ってたはずなのに…》
《ついでに届けるんだ…》
複雑な想いがかほの中に広がったが
別れた後荷物を返す…
ただそれだけのことと、すぐに不安を消し去った。
それが後に
かほが苦しむことになる
第一歩の日になるとは
誰が予想できただろう…
不信感を抱きながらも
かほはよしきを信じていたかった。
.