悪魔のクッキング
テーブルをはさんで、夫婦は皿を取り合う。

「母さん、お代わり」

「遅刻します! 家計が苦しいんですから、減給だけはカンベンしてください!」

「…せめてハム一枚」

「……一枚、ですね? なら今のうちに出掛ける準備してくださいな」

「分かったよ。母さんには敵わないなぁ」

ボリボリと頭をかきながら、夫は出掛ける準備をする。

そして玄関に立った時、

「はい、アナタ。あ~ん」

妻が笑顔で一枚のハムをつまんで、口元へ持ってきたので、素直に口を開ける。

「あ~ん。…んぐんぐ。やっぱり母さんの料理は最高だな」

「褒めていただいても、今日の晩御飯は子供の好きなハンバーグですからね」

「がっくり…」

「…子供と張り合わないでくださいな」

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