王国ファンタジア【氷眼の民】
まず彼が我々の言うことを聞くはずがない。返って王の不信感を買うかもしれぬと。
けれど大長老の次の言葉に、長老たちは口の端を吊り上げた。
「……来たようじゃな」
会話を終えた大長老の視線の先には、少年が立っていた。
黒いローブに身を包んだ、まだ年端もいかぬ少年。
黒髪に幼い顔つき。両目には包帯が巻かれていて、氷眼の民特有の透き通った氷蒼の瞳を確認できることができない。
少年は黙って部屋の中央に赴き、五人の長老達に囲まれる形で、目の前に大長老に視線をぶつけた。
「レイン。お主には王都へ赴きドラゴンの討伐任務を受けてもらう。話はすでに聞いていると思うが、我ら氷眼の民は王都より徴集を受けてはいない。
だがこれは一族復興の限られたチャンスなのだ。ここで功績を上げれば、反逆者の汚名を晴らすことができる。
徴集はかけられてはいないが、我らの力は王都の人間が良く分かっている。最終的に氷眼の民の力を欲するだろう。
その容姿ならば不信感も得られず、討伐の任に付けれるはずじゃ。
お主ほどの実力の持ち主なら、ドラゴンにそう易々と殺られることもあるまい。引き受けてくれるな」
大長老自らの頼み。