かんけりっ!
いや、それを狙ってこの種目を選んだのだが…。
「キャプテン。……俺、勝手に行きますよ」
そう言って奴、西木(にしき)は部室棟に向かって歩き始めた。
俺は西木に「死ぬなよ」としか言わなかった。
いや、言えなかった。
西木は俺に親指を立て、「勝ちに行きます」と言った。
西木の背中が消えるまで、俺の視線は奴に向け続けた。
「…キャプテン。西木の奴、大丈夫ですかね」
残ったのは、俺ともう一人の二年生、東田だけ。
「大丈夫なはずだ」
俺は東田にそう告げる。
いや、その実。本当は自分に言ったのかも知れない。
「あいつの足の速さはサッカー部随一だ。あいつなら、きっと…」
その時、俺の携帯が鳴った。
「キ、キャプテン…。それって、『薄桜〇』のじゃ…」