かんけりっ!
【勇者】は桃東先輩を置き去りにして一気に駆ける。
無人の缶に向かって。
桃東先輩は油断したのかどうかはわからない。
わからないが一つだけアホな僕でもわかる事がある。
それは、僕が桃東先輩に助けてもらった。ということ。
恩は、返すためにあるんだ。
「な!?」
【勇者】が、併走する僕を見て驚愕に目を見開く。
「僕はまだ死んでいないぞ【勇者】!!」
「小癪な、ガキめ!!」
【勇者】の足が止まる。
瞬間、目の前に裏拳が打ち込まれた。が。
「読めてるんだよ!?」
頭を下げ、裏拳が髪の毛を掠める。
お返しだ!!
足の止まった【勇者】に今度は僕が裏拳を放つ。
「ゴッ」と鈍い音。
「ぐぁっ!?」
吹き飛ぶのは【勇者】の巨躯。