かんけりっ!



なぜ彼女達二人が仲悪いのか『彼』は知らない。


だが、多分理由はあの二つ名だろう。


トライゾン。


『裏切り者』を指すその二つ名を茜子はどうしても好きになれないのだと思う。


人の悪意に対して潔癖な所があるから受け入れられないんだろう。


茜子はひとしきりトライゾンと睨み合うと突然椅子に座り再びキーボードを叩き始める。


トライゾンも「フンッ」と鼻を鳴らしてから『彼』のもとに歩き始める。


「会長これ、頼まれていた外務資料です。それに缶蹴同好会についての報告書です」


「うん、ありがとう」


胸に抱き込んだ資料を受け取る。


資料は上部を挟み込みクリップで綴じただけのものだが、なかなかのボリュームで雑誌の一冊は刊行出来そうな厚さだ。


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