かんけりっ!

雷駆する少女




☆ ☆ ☆


『彼女』は何の比喩でも表現でもなくそのままの意味で草陰に身を潜めていた。


屈んで、大して大きくもない体がやっと隠れる程の一般的な公園には必ずあるだろう草陰に。


息を殺し存在を消し、ただひたすらに草陰に潜み、一点を見つめる。


見つめる先。中庭を十字に切るように舗装されたアスファルトの、ちょうど真ん中。十字の交差する所。


まるでそれはこの中庭の主であるかの如く鎮座する赤いアルミ缶。


中身は無論、空だ。


……『彼女』はゴクリと一つ、唾を嚥下した。


ザッザッとワザとらしい砂利を鳴らす靴音。


気配。それに草の隙間から覗ける『鬼』の姿。


距離は近い。


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