かんけりっ!
あの人
★ ★ ★
『彼女』は一つ溜め息を吐き出し、部室の鍵を閉めた。
既に外は夜の帳を下ろし、空気も春の穏やかな暖かさは身を潜めていた。
「姫様、溜め息吐きすぎ」
『彼女』は視線を手元から掛けられた声へと移した。
そこにいたのは、壁を背にした金髪の女生徒。
「待っててくれたの葡萄園?」
葡萄園。そう呼ばれた女生徒は答えずに、代わりに奥の夜闇が可笑しそうに答えた。
「そうじゃなかったら僕の事でも待っててくれたのかな?」
夜闇は段々と人の形に薄れていきそれは見慣れた男子生徒を浮かび上がらせた。
「梨乃原も、待ってたの」
フランシアはそう言って壁から体を引き離す。
煌びやかな金髪だけが壁との別れを惜しむかのように最後まで張り付いていた。