hatching
突然、違う方の手が
引っ張られ軽く抱き止められた。
「なにやってんだよ、恋。」
声に振り返ると
雄飛がいた。
抱き止めた影響で
傘が転がっていて、
少し濡れている。
『雄飛…なんでいんの?』
ユ「帰りこっちの方。」
雄飛は後ろで騒いでいる
チャラ男2人に冷たい視線を送った。
私も恐いよ…。
「なんだよ男いんじゃん。」
「早く言えよな。」
なんて言ってどっかに行った。
助かった…。
『ありがとう、助かった!』
ユ「傘無かったんなら待ってればよかったのに。」
『雨降るって知らなくて。ごめん、濡れちゃったね。』
雄飛の濡れている肩を
背伸びして払う。
ユ「いいよ、別に。大したことない。」
『へくしゅっ!』
くしゃみ…はずかしっ。
ユ「お前のが濡れてる。」
鞄をあさる雄飛。
ユ「ジャージしかないから。これ着とけ。ないよりましだろ?」
『いいよ!大丈夫!』
ユ「だって震えてるし。」
ずちっと私にジャージを押し付ける。
『…ごめん、ありがと。』
ユ「気にすんな。お前家どこ?」
『え?戸亜留駅の東口側のセブンの近く。』
ユ「わかった。いくぞ、送ってく。」
…は!?
『いいって!悪いよ!面倒だし、風邪引くよ!』
ユ「いいよ。戸亜留駅なら最寄りだし。反対口だけど。それにお前のが風邪ひくよ。」
まだ悩んでる私に、
ユ「それとも俺に、濡れて帰れってか?」
なんて言ってきたので、
お言葉に甘えることにした。