みずいろ

もう初夏といってもいいくらいなのに、この時間はさすがにまだ薄暗いよな。



ただ、換気扇の音だけがゴーッ、と鳴り響いてる。



ホテルの空気はいがいがとのどを刺激してきて、俺はテーブルの上のペットボトルの水を一口飲みこんだ。



そして、ふと目に止まる、部屋の隅。



そこには、黒いバッグがずっと置いたままになってる。



しばらく見もしなかったそれに、なんで今触れようと思ったのかはわからない。



ジーッ・・・・と音をたててファスナーが開くと、中から黒色のカメラが頭を出した。



久しぶり。



人差し指でそっとカメラに触れると、頭の中に鮮やかに記憶が蘇る。



と同時に、いつも感じる、喪失感。



それは、きっと事故の前に俺が大切に持っていたもの。


それがなになのかは、今となってはわからないけれども。



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