みずいろ
「悠司くん」
「彼女」・・・・大橋果歩は俺をそう呼んだ。
少したどたどしいイントネーションで呼ばれる自分の名前に、少なからず感じた違和感で初めから気になってたのは確かだった。
可愛い子だな、って思った。
透明な子だな、って思った。
少し茶色い瞳はくるくるとよく動いて、姉ちゃんと俺の漫才みたいな会話に、くすくすよく笑ってた。
・・・・姉ちゃんの知り合いかな。
一度聞いたことがあったけど、彼女が一瞬とても悲しそうな目をしたから、それからはなるべく、なんで?って聞かないようにしてたんだ。
どうして毎日ここに来るの?
なんでそんなに悲しい顔をして笑うの?
どうして?
って気になることはあったけど、彼女を包む空気はとても自然で、落ち着くことが出来たから、俺のためにももうあまりハテナを彼女に聞かないようにしてた。
俺はいつしか、毎日同じ時間。午後の2時15分位。彼女が病室に顔を出すその時刻を心待ちにするようになってたんだ。