まぶたを開けた時


「俺に用があったんだろ?」


その通りだ。
彼はその事をわかった上で私に声をかけてくれたのだろう。

それなのに私はシンドリーを見てたから……。


反省してシンをちゃんと見ると今度はシンが私から視線を外した。



その頬は若干赤みを帯びている。なんだ?

体調があまりよくないのかもしれない。そのせいで熱があるのかもしれない。



私の中で不安が広がる。



「シン。王子から直々に来て頂いたんだ。稽古は後でいい。少し話して来ていいよ」



背後からシンドリーの声が聞こえて振り返る。シンは「ありがとうございます」と礼を述べて私の腕を引っ張った。



シンの足取りは早い。
手を離されたらついていけないのではないだろうか。





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