まぶたを開けた時
それなのに私の今考えてたことが一気に飛んだ。
耳もとで聞こえたシンの声、背中と腰に回されたシンの力強い腕。
吐く息白いこの庭園で感じるのは、シンの熱。
引き寄せられるように抱き締められて、包まれるようなシンの香りに躊躇する。
どうしたの。の一言すら言えない。
「ごめん。少しだけこのままでいさせて」
返事も出来ない。
シンの声が近くに聞こえ過ぎて動悸が半端じゃなかった。
ただ頷くとシンの髪が頬に触れてくすぐったい。
こんなとこ、シエナが見たらなんて言うだろう?
……ってシエナは関係ないでしょうが。
***
「おはようじゃなくてこんにちはかしら」
ソファーに座ったシエナはベッドから起きたアレンに微笑みかけた。
先程までいたシチは夕方が近付くと最近必ずどこかに行く。