まぶたを開けた時
「大丈夫よ!!」
なんていいながら通知表10段階、体育の欄の寂しい4が頭にちらついた。
ずっとピアノは弾き続けられるのに3分と走れない。
でも、バーゲンの地下街はいくらだって歩けるんだから。
そう頷いてシエナを見ると、シエナは真っ直ぐ前を見ていた。
「ねぇシエナ」
「何?」
声をかけると私を見てくれるシエナに笑顔で「降ろせ」と言うと、もちろん笑顔で「バアアアカ」と返ってきた。
まあこれは想定の範囲以内である。
「うっ」
「どうしたの!?」
胸を抑えて眉間に皺を寄せると、ホラ。心配性なシエナはやっぱり心配してくれて、歩きながらでも私の様態を確認しようとした。
「気持ち悪いの。酔った。降りたら治るから」
「降りたら……?」
やっぱりそこにつっかかったシエナ。
どうか、どうか流して私を歩かせて。