まぶたを開けた時


もう意味わかんない。
天を振り仰ぐと手をグイッと引かれた。

「うああっ」


なんの抵抗も出来ずに視界の焦点を何とか合わせると目の前にシエナの顔がある。

すぐに身をひこうとしたのに体が抱き締められていて動かない。


「キス、したい」

「それも私を守るためのおまじない?」


違うよね、と笑うけど、顔が近くてどうしようもなく顔が赤いのがわかる。


「求愛」

「はい?」

「あんたが好きよ」



驚いて目を見開くと、部屋の扉がコンコンとノックされた。

「着いたから出てきて下さい」


アイリリードだ。

行かなきゃって逃げようとすると、シエナが扉に向かって、今行くわ、と言ってから再び私を見て

触れるだけのキスをした。

今までになくドキドキしていて、思考も停止していて、クスリと笑ってシエナが立ち上がって、

やっと正気になった。



「何してるの?いくわよ」


また、何もなかったみたいなシエナの態度がムカつくから、私も何もないようにしようと、立ち上がってシエナより先に部屋を出た。





< 234 / 235 >

この作品をシェア

pagetop