手のひらに、桜




「ね、高村さんって桜が好きなの?」



先生にガミガミと叱られた後に、

指定された席に座っていると、

後ろの席の少女が話しかけてきた



「桜?大っ嫌い」


私は、とにかく即答する


桜を好きだと思われるのは、嫌だ




少女は、あまりに即答だったからか、

ちょっと目を丸くしていた


でも、気の弱い子ではないみたい


すぐに「そうなんだ」と話を続けた




「で、高村さんの下の名前は・・?」



「つむぎ・・字、分かる?」




私はそう答えながら、

この子はなんて名前なんだろう、と思った


今の席は出席番号順だから、

高井か高橋か、それくらいだと思うけど・・




「うん。分かる分かる!糸偏に方向の方で紡、でしょ」



少女は、笑顔のままそう答えた


さっきからずっと笑顔だけど、

疲れないのだろうか



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