ポケットの恋
13
「………」
「………」
「いやぁ、いーい天気だねぇ!」
「うっ…うん!まさに行楽日和!ねっ」
人で溢れる遊園地の入場ゲート。
「…古谷、どういうことだ」
南部は低い声で古谷に尋ねる。
「ダブルデートだね!」
「おまえなぁ!!」
大声をあげた南部は周囲の注目を浴びることになった。
南部は慌てて声のトーンを低める。
古谷の首に腕を掛けると自分の方へ無理矢理寄せた。
頭を付き合わせる形になると、極小の声を絞り出す。
「なんで幸日ちゃんがいるんだよ!」
「え?だってダブルデートじゃーん。三人じゃダブルにはならないもの。嫌だわ秋仁さん!オホホホホ…」
古谷が汗一つかかずに、わざとらしく笑う。
南部は盛大に頬を引き攣らせた。
「聞いてない。なにも聞いてないぞ俺は!お前秋田さんと二人きりって言ったよな!」
南部の必死の訴えを、古谷は華麗にスルーした。
するりと南部の腕を抜ける。
「真実ちゃん、何したい?観覧車?コーヒーカップ?メリーゴーランド?…ってあれ?」
真実の方を振り返ると、そちらも文字通り顔を突き合わせて、何やらごにょごにょと話していた。
「真実ちゃんの嘘つきっ!」
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