ポケットの恋
「嘘はついてないでしょ!?二人っきりで行くってあたし言った?」
涙目の幸日に、真実はにべもない。
「んぐっ…そんなの屁理屈だよ!」
「あーあーうるさい!!悪かったわよ!でも言ったらあんた来なかったでしょ!」
「…そう…だけど…」
真実の剣幕に、幸日の声は急速にしぼんだ。
「ほら!行くよ!来たかったのは事実でしょ!?」
真実に手を取られると幸日はようやく、渋々ながらに頷いた。
「そっちも話ついた?」
にこやかに話しかけてきたのは古谷だ。
真実は黙って頷いた。
幸日のためとはいえ、騙したのは若干後ろめたい。
「じゃあ行こう。真実ちゃん、何したい?」
古谷は逃げ腰になった真実の手を掴むと歩きだす。
「ちょっ…やめてよ気持ち悪い!」
「いいから。俺らが組にならないと、あの二人絶対ダメでしょ」
確かに、幸日は真実について来る気満々だった。
「…わかった」と、真実は渋々頷いた。
「でも手を繋ぐ必要はないんじゃない?」
「それは私用ー」
「は?」
「何したい?観覧車?コーヒーカップ?メリーゴーランド?」
怪訝な顔になった真実を無視して、古谷は先程の質問を繰り返す。
「なんで選択肢が全部恋人仕様なのよ」
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