ポケットの恋
呆れたように真実が言うと、古谷は思い出したように、ニヤリと笑った。
「そーだ。ここカップル向けのアトラクションあるんだったよねー?」
声は後ろに聞こえるように、わざとらしく大きい。
「そんなのあるの?」
「うん。シューティングゲームみたいなの。ある得点以上とると、商品ゲットらしいよ?真実ちゃん欲しくない?」
欲しくない、口までと出かかったが、ここは空気をよんだ。
「あー……ほしいかも…」
「そう?じゃあ、決定ねー?南部!」
古谷が振り返って声を掛ける。
後ろにいた南部は、「あ、あぁ」と小さく頷くと横にいた幸日に話し掛けた。
「じゃ…行く…?」
「ぁ…そうですね」
幸日は曖昧に笑って答える。
歩き出すと、ぎこちなくではあるが幸日と南部は会話を始めた。
それを見て、古谷と真実はどちらからともなく目を見合わせて笑った。




「これ……近すぎでしょ!」
真実はアトラクションをいざ体験するという段になって悲鳴をあげた。
古谷の言っていたカップル向けのアトラクションは、二人乗りの乗り物に乗り、備え付けられているピストルのようなものでコースにある的を狙うという物だ。
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