ポケットの恋
二人が前後に座って乗り物の前部についているピストルを交互に操作するようになっている。
当然前後の仕切りは無く、一つの長い座面に二人が収まる仕組みだ。
そして真実は、後ろに座っている古谷の両足の間におさまっていた。
ピストルを使う為に古谷が前に身を出すと、必然的に体が密着する。
「でもこれ正式な乗り方だよ?あそこの説明の看板にある絵とまるっきり同じじゃん。」
「こんなの絶対だめでしょ!幸日と南部さんだって困るって!」
真実はほとんどパニック状態だ。
「秋仁は嬉しいんじゃない?」
古谷はけろりと言い帰す。
「だっ…幸日は!?」
「真実ちゃーん。二人をくっつけるのが目的じゃん」
「くっつけるの意味が違う!!」
真実の悲痛な叫びは、乗り込んだ窮屈な乗り物が動き出すのと同時になりだした、やたらファンシーな音楽に掻き消された。


乗り物が進むと、すぐにトンネルに入った。
急に真っ暗になる。
「意外と本格的…」
真実が呟くと、古谷が後ろで、そうだねと笑った。
最初は、あまり緩急が激しくないジェットコースターが主だ。
緩やかで、スピードはないが、まわりが真っ暗なだけ少し怖くもある。
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