ポケットの恋
後ろから、幸日の小さな悲鳴が聞こえたような気がした。
このかわいらしい悲鳴も折り込んでのカップル仕様か。
「秋田、しっかりピストルもって!始まるよ」
トンネルから出ると、暗闇の中で、ネオンのように的が光っていた。
「あの赤いとこね。真ん中の」
「わかってる!」
ねらいをつけて引き金を引く。
打った途端に、手に振動がきて驚いた。
「なにこれ。なんか振動来るんだけど!」
「へぇ。反動ってことなのかな。まぁレーザーってだけじゃ男は面白くないもんね」
「あ…あぁ、そうなの?」
言いながら真実は必死で操作している。
けれどすぐに音を上げた。
どんなに狙って打ってもほとんど当たらない。
「ちょ…無理っ!やって!」
そう言って古谷に押し付けるようにしてピストルを渡した。
ピストルについたコードがぴんと延び切る。
古谷はきょとんとした後、にやりと笑った。
「いいの?」
「は!?何が!いいから打って!」
真実は周りばかり見ていて、古谷を見ずに答える。
「ほいほい」
次の瞬間、真実は古谷に抱き込まれるような形になった。
「…ちょ…ちょっと!なんか…ねぇちょっと!!」
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