ポケットの恋
「ごごごごめんなさい!これすごく難しくないですか?どうやったら当たるんだろう」
ゲームに夢中で南部のことは頭にないのか、幸日は普通に答えた。
「かして?」
「はい!」
幸日からピストルを受け取ると、今度は完璧に抱き込むようになる。
腕の中で幸日が固まるのを感じたが、南部は構わず的を狙って打ち始めた。
すぐに点が加算される。
加算された点は乗り物の前についているパネルに表示される仕組みだ。
一気に増えた点を見て、幸日が顔を輝かせた。
同時に体の強張りも解けたらしい。
「南部さんすごいです!」
満面の笑顔で言われて思わず手がぶれる。
「全然だよ」
苦笑してみせると
「でももう4000点も!」
と南部の服の裾を引いてパネルを指差した。
一瞬で心臓が騒ぎ出す。
南部は小さく息を吐き出すと曖昧に笑って、また的に集中した。
感じ悪かったか、と焦って幸日を見るが別にさっきと変わらない。
顔を輝かせたまま、的に見入っている。
この手のゲームが得意でよかった。
でなきゃこの笑顔は見られなかっただろう。
「あっ!南部さん、5000点越えましたよ!」
「本当に?」
「はい!」
< 120 / 341 >

この作品をシェア

pagetop