ポケットの恋
テンポのいい、スムーズな会話が心地いい。
「いいなぁ。あたしも的にあてたい」
「じゃあ…」
ちらりと前方を伺うと、うっすらとだが、古谷と真実が楽しげにしているのが見えた。
それが背中を押す。
「じゃあ、俺が狙って支えるから、幸日ちゃん引き金引くといいよ」
「いいんですか?!」
幸日がはしゃいだ声を上げた。
その手を取って、自分のピストルを持つ手に重ねる。幸日の手がびくっと震えた。
「あ…やっぱりいいです…」
急に言われて引かれたかと慌てて幸日を見ると、顔が赤い。
これが思い上がりでないとしたら。
「なんで?あ、ほら今!」
自分の判断に頼るように、幸日の言葉を無視する。
幸日が反射で引き金を引いた。
それが見事に300点の的に当たる。
「できたじゃん」
笑い掛けると幸日ははにかんだように笑った。
「次あっち。青いやつね」
「はい!」
一度あたったことで気をよくしたのか、幸日は今度は迷いなく手を重ねてきた。
得点が増える度に、きゃっきゃっと嬉しそうな声をあげる。
髪が揺れるといい匂いが南部の鼻をくすぐった。
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