ポケットの恋
「秋田さぁ…もっとうまいやり方あったでしょ…」
古谷が苦笑しながら言う。
ベンチの横に座っている真実は、「はぁ!?」っと眉を吊り上げた。
「知らないわよ。あんたがなんとかして南部さんと幸日を二人きりにしようとか言うからでしょ!?」
「いや、でももっと他に良いやり方がさぁ…」
真実はなによ、と思い切り古谷を睨みつけた。
「あの子達二人きりにすると、あたし達まで二人きりになっちゃうでしょ!一人ではぐれた方がよかったの」
「またまたぁー。真実ちゃん素直じゃないなぁ」
「素直!!十分素直!」
大袈裟に古谷との間をあけながら、真実は顔をしかめて切り替えした。
古谷は平気な顔でその間を詰める。
「うまくいくといいね、あの二人」
「あんな方法で上手く行くわけ?」
「平気平気!結論秋仁、やるときはやる男だからさぁー?まぁ、まだジュニアハイスクールラブどまりだけど」
「はぁ…そう…」
古谷の言葉に、真実は首を落とした。
「なら、普通にほっとけばよかったじゃないのよ…」
「でもきっかけがなきゃやっぱり秋仁も動けないし。ありがとうね?真実ちゃん」
古谷が、伏せた顔を屈んで下から見上げると、真実は思い切りのけ反った。
「あんたぁー!あ、あんたぁー!」
真実が口をぱくぱくさせながら大声をあげる。
周りにいる人混みから、不審気な視線が古谷に注がれた。
古谷は焦った顔をすると、慌てて真実の口を塞ぐ。
真実はわけのわからないくぐもった悲鳴を上げた後、ようやく周りを理解したようで静かになった。
目で手を離せと合図してくる。離すと、涙目で睨んできた。
「なにすんのよ…」
古谷の手の平が触れたのがよっぽどいやだったらしい、手の甲で唇を拭っている。
「だって真実ちゃんが大きい声出すからじゃん」
「あんたが意味わかんないことほざくからでしょ!」
「え…どれが意味わかんなかったの」