ポケットの恋

「真実ちゃん、今日も古谷君来てるわよ」
バイト先のカフェへ入った途端、店長の結城明日美が小声で囁いてきた。
窓側の席に古谷がいるのを確認して、真実は盛大に顔をしかめる。
「…みたいですね」
「熱心に通い詰めてるねぇ。愛されてるじゃない、真実ちゃん」
「やめてくださいよ…。アレ嫌がらせですよ」
真実がため息をつくと、明日美は大袈裟に首をふった。
「そんなことないわよ!とってもいい子じゃない、古谷君!時々話すけど、真実ちゃんのこといつもすごく心配してるみたいだし」
「店長…いつの間にか、古谷と仲良くなってますね」
「あら大丈夫よ!とらないから?」
明日美はそう言って巧みにウィンクしてみせる。
「そういう問題じゃありません!」
真実はずんずんカウンターへ向かった。
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